今回は、
綿の歴史からお話をさせていただいたのは、今回のためといっても過言ではありません。
今回のお話は、生地にとって、最も大事なポイントの一つです。
生地は、原糸が太ければそれに比例して厚く、
また、太い糸を使えば、野太くカジュアルな印象になり、
その原糸の細さを表した数字が、番手(ばんて)
本来は番手というのは、単純に、糸の細さ、太さを示す指標です。
ただ、この糸の細さを示す数字が、生地の価値を示す数字として別の機能を果たすことになります。それは、
「良い綿=シルクに近い綿」
という歴史的な価値観と織機の性能の向上が、そのように方向付けたと考えられます。
19世紀のヨーロッパでは、すでに綿という夢の素材が流通し、一般化し、上流階級では当たり前の時代に入っていました。
すでに伝染病などは少なくなり、生活の中に、綿布という人類史上最高の衣類が当たり前になった後、次のステップとして上流階級では、
「さらに良い綿」
を求めだした時代でした。
織機の性能は、産業革命で飛躍的に上がり、量産され、さらなる品質の向上に、方向性が向いたのです。
そこで、出来る限り細い繊維を使い、きめ細やかで、肌触りの良い生地が求められました。
結果、より細い繊維の番手の高い糸を使い、高番手の綿布がもてはやされるようになります。
単純に考えて、細い繊維で、原糸を作るためには、品質の良い繊維が必要になります。
細くても切れず、できるだけ繊維の長い超長綿で品質の良い繊維でないと、細い番手の原糸はできません。
結果、番手が上がれば(糸は細くなればなるほど数字が大きくなります。)、コストも上がり、原糸が細くなり、それに伴って織る回数が増え、それ用に織機が新しくなり、
「生地が薄くなると高価になる」
言う図式が出来上がりました。
お客様から、よく、
「高価で厚めの生地は無いの?」
と問い合わせを頂きますが、残念ながら、あまりございません。
稀に「海島綿などの良い繊維を使って、番手の高くない原糸を作り、比較的厚めの生地にする」ことがありますが、それほど多くはありません。
「良い生地=高番手の薄手生地」
というのが、根強く息づいているのだと思います。
さて、では現代では、番手というのは実際、どうなっているのでしょうか?
次回以降詳しくお話しさせて頂きます。