前回、シャツの素材について、お話ししました。
今回は、その中でも、シャツの素材として、大多数を占める、綿についてシャツに特化して書いてみたいと思います。
まず、綿という素材の概要を説明します。
衣類でいう綿とは、綿という植物の種子につく実綿から生成した繊維になります。
衣類になると、あまり気になりませんが、元は植物です。
この綿という素材がヨーロッパに伝わったのは、18世紀以降のことです。
それまで、中国から非常に高価な絹と、ウールが主であったヨーロッパは、衛生面で優位性のある綿の出現で大きく変貌していきます。
歴史的に疫病などに苛まれていたヨーロッパの人々は、洗える素材の出現に歓喜します。
事実、綿のヨーロッパでの普及によって、疫病の流行はそれ以降激減しています。
綿は、着心地が良く、洗えて、さらには加工もしやすい、まさに人類にとっては、無二の宝なのです。
綿が普及した反面、羊毛は需要を大きく減らし、市場は綿への依存に移行していくことになります。
同時にそれまで羊毛を扱っていた羊毛織物産業が、綿の脅威にさらされ衰退することを意味します。
そんな中、イギリスでは危機感を感じた羊毛業者が、織機を綿に転用することに成功し、爆発的な発展を遂げます(この中心にいたのが、かのトーマスメイソンです)。
これがいわゆる産業革命につながり、一躍、綿織物は、布地の主役に躍り出ることになります。
同時に、綿の織物の進化が進み、憧れの絹に近い物を作ることは出来ないかと、綿生地の高級化も進むことになります。
それが現在にまでつながり、高番手化(品質の良い細い繊維を使い、シルクに近づける)となっていったわけです。
綿の価値は、いかに絹(シルク)に近い物になるか?絹よりもはるかに便利で、使いやすい綿を使って、肌触りや光沢感は絹のようにできるか?
それが特に肌に直接触れる、シャツ生地としての綿の使命なのです。
「綿の品質とは何か?」
ということはこれでご理解をいただけたと思います。
では、
「どうしたら綿の素材をよくすることが出来るのか?」
この命題に、先人達が出した答えは、
「良い原料となる綿花を見つける」
「良い紡績法を見つける」
この二つでした。良い綿を探し、国外では世界中を航海する時代が訪れます。
同時に、国内では紡績技術が急速に発展していきました。