皆さんは「シャツ通」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?
高級なシャツを何枚も持っている人や、各国のブランド事情に精通している人でしょうか?
日々、お客様のシャツをお仕立てしていると、いろいろな「シャツ好き」の方に出会います。
私はそんな皆様全員を当然愛してやみませんが、その中でも特に「本当の通だな」と唸らされる方がいます。
それは、ご自身のこだわりを持ちつつも、決して頭でっかちにならず、柔軟な心を持っている方。そして、値段やブランドタグに惑わされない「審美眼」を持っている方です。
ブランドには不思議な力があります。それは「自信のない人に、自信を与えてくれる力」です。
私も、自分が詳しくない分野の贈り物をする時は、つい有名なブランドを選んでしまいます。
それは自分の目に自信がないから、ブランドの看板を借りて安心したいのです。
でも、自分がよく知る、愛する世界ではどうでしょうか。 ブランド名なんて関係なく、「これは良い!」と心から思えるものを選びますよね。
「これ、聞いたことないブランドだけど、すごく良いんだよね」
そう言って、無名のアイテムを堂々と着こなせる人。ブランドの威光に頼らず、自分自身の感性を信じられる人。 そんな人こそが、本当の意味で自信を持っている人であり、真の「通」なのだと思います。
今ある偉大なブランドも、最初はすべて無名の小さな工房でした。 それを「ブランド」へと育て上げたのは、看板ではなく本質を見ていた、かつての「通」たちです。
だからこそ、皆さんにも願っています。 ブランド名にこだわらず、クリアな心で。 目の前のシャツ一枚と向き合い、その良さを感じ取れるような、そんな素敵なマインドでいてほしいと。
