今回は、シャツの顔とも言うべき、肩ヨークについて書いてみたいと思います。
肩ヨークとは、肩の切り替え部分を指します。
シャツの最もシャツらしいデティールがこの肩ヨーク(単純にヨークとも)です。
シャツはなぜか肩の部分が切り替えになっていて、さらにこの部分は二重構造になっています。
さてなぜでしょう?
答えは、シャツの重みや、腕や腹部などの動きによる引っ張りに耐えるためだと考えられます。
現実的に、ヨークが無いシャツは、肩部分の強度が弱くなってしまいます。
さらに、この肩の部分の生地は伸びてしまいやすいのですが、二重にするだけで、伸び防止にも繋がります。
また、背中の肩甲骨の膨らみを補うためのダーツが、この切り替え部分には入っていたり、同じく肩甲骨の動きなどに対応するためのプリーツや、ギャザーを入れたりもできます。
このヨークという切り替え部分は、非常に優秀なデティールで、まさにシャツの顔と言うべき大事な要素になります。
さて、この大事なヨークですが、実はもう一工夫すると、更に性能が上がります。
背中の真ん中で、二つに分けるスプリットヨークと言われる仕様です。
スプリットヨーク、イタリアでは「Spallone Smezzato(スパローネ スメッツァート 半肩の意味)」と言われるそうです。
仕様の意味としては実は4つほどあります。
一番は、肩のラインが伸びないように、型崩れが起きないように、縦地を通すということです。これによって、長時間ハンガーに吊ったりしておきますと、スプリットヨークであるシャツは型崩れが少なく、そうで無いシャツよりもとても見栄えに差が出ます。
こんなにも違うのかと思えるほどです。
二つ目は、背中の中心部分の丸みを補うために、今度は反対に若干伸びに対応できるように少し斜めに地の目を通すということです。
これもわずかですが、確かに身体のラインになじみ、確かに少し違いが出る気がします。
三つ目は、単純に格好いいということ、本格的なシャツはスプリットヨークが多いのが頷けます。
そして知られていない、最後のメリットは、生地が場合によっては少なくて済むというメリットです。
ヨークは意外に大きなパーツで、長さも必要としますので、大きいサイズの方には場合によってはシャツ生地1枚分で収まらないことがあります。
そんなときに、半分に切れるスプリットヨークは救い主になったりします。
ただ、そんな良いことづくめのスプリットヨークですが、場合によっては、逆に多く生地を必要としたりする場合もあったり、ツイルのような斜め綾の生地はスプリットヨークは柄の方向がおかしくなるので出来ないといった禁忌的な部分もあります。
機会がありましたら、そんなシャツの顔を一度改めて眺めてみて下さい。