最近、シャツの世界でも、「立体裁断」という言葉をよく目にするようになりました。
英語ではドレーピングと呼ばれます。
さて、この立体裁断とはなんでしょうか?これは、人体に、布を当てて、パターン(服の設計図)を作っていくという手法です。
実は、特別な方法ではなく、西洋では古来から伝わる服作りの正統的な手法です。
立体裁断で作る、といいますとその反対は?というお話になりますが、これは平面図法ということになりますでしょうか?
ただ、ここで間違ってはいけないのは、平面図法も、元は立体裁断で作った原型から行われるということです。
実は、両者は同じといっても過言ではありません。
立体裁断だけで作ると、立体的に作れるというメリットがある反面、製品の安定感に欠けるという点と、あくまでも立ち姿を基準に作られるので、体の動きによってゆとり分が少なすぎになる場合がある、というデメリットがあります(アナログ的)。
反対に、平面図法だけで作ると、製品の安定感は絶対的ですが、その反面、数値で管理されるので立体感に欠けてしまいます(デジタル的)。
立体裁断(アナログ)と平面図法(デジタル)の良いところを併用して作るのが、製品としてはベストと言えると思います。
ちなみにシャツの場合、立体的に作りすぎると、アイロン掛けが大変という問題が生じます。
アイロン掛けが大変な上、上手なクリーニング店でないと、立体部分がシワになって返ってきてしまいます。
スーツと異なり、その都度クリーニングをしなければならないシャツという特性を鑑みても、両者を併用するのがベストと思います。
私自身も若い頃、情熱のままに「究極の立体シャツ」を作ったことがありましたが、本人の熱意とは裏腹に「アイロン掛けが大変」、「ラインが女性的すぎ」、「シワになる」とよく言われたものでした。
ちなみに現在では、その経験を生かして、立体裁断で作ったパターンを元に、コンピューターによる平面図法の良いところを取り入れてシャツを作っております。