立体裁断にはロマンがある

立体裁断についてお話ししたいと思います。
以前にも書かせて頂きましたが、だいぶ時代とともに、変化もし、私自身、立体裁断について考えが変わりました。
立体裁断とは、ボディーに布直接当てる、またはその着られる方の人体に直接の当て、布を切って形を作っていく方法です。
主にヨーロッパなのではメインの方法として使われる技法の1つです。
ただ日本ではあまり採用されることが少ないやり方です。
これは1つには日本人の几帳面さというか、細かさが立体裁断と言う、ある意味では、曖昧な方法と民族的な意識が合わないからだと思います。
人体やボディーに直接布を当てて形を作って切っていくと言う、この立体裁断は、ある意味では究極の方法と言えると思いますが、とても大きな欠点を有しています。
それは簡単に申し上げるとやるたびに結果が変わってしまうと言うことです。
安定性に欠け、別の部分が動いてしまったりと、そう言った意味では決して良い方法とは言いがたい部分があります。
しかしこのやり方は合理的と言えば非常に合理的といえますので、1つのやり方としては良い方法だと思います。
そこで採用されるのが立体裁断と平面製図の融合と言う方法です。
これは立体裁断したものを平面製図と照らし合わせ、正確に修正し直す方法、もしくは一度、平面製図で作ったものを、人体やボディにかけて、そこで立体裁断の手法を取り入れていくと言う方法です。
前者は欧米で、後者は日本ではよく採用されています。
よく、立体裁断で作ったシャツ、と言う謳い文句でシャツを販売されている業者がいますが、実際には流通している市場に出回っているシャツと言うのは、少なからず、この立体裁断と言う工程を、経ているものがほとんどです。
ただ、100%を立体裁断で作られたというシャツは皆無です。
そういう方法も、ロマンがあって私はもちろんありだと思います。
ただその都度結果が変わってしまう、そこに果たして製品化して良いのかとそういう不安が常につきまとうわけです。

しかし、オーダーの世界から1回1回変わったとしても、製品として何も問題があるわけではありませんのでいいのかなと私は思っています。1つには立体裁断にはロマンがあります。安定を捨てたところにロマンがあるわけですから、シャツの愛好者としては1度はやってみたいですよね。
私もそう思います。

ただ、お客様の体に直接立体裁断で布を当てると言う事は、布はよしとしても、ハサミを入れていくと言う事は非常に難しい作業になります。
その辺をご理解いただければ、私もお客様にご提供してみたいと思っております。